皆さんは歯科医に何を求められているでしょうか。歯を削ってほしいとか抜いてほしいと考えられる方はいらっしゃらないと思います。虫歯は治してほしいが歯は削ってほしくない、できれば歯は抜かないでほしいというのが本音だと思います。入れ歯であれば不自由無く咬めるように、あるいは人前で入れ歯を外したくないと思っておられるのではないでしょうか。本当にその通りだと思います。
本来、歯科医院あるいは歯科医師をはじめとする歯科関係者の使命は、歯の治療をすることばかりではなく、口の中の健康や食べる機能を守ることであり、そうすることによって体の健康を守ることだと私は思っております。そのために虫歯はやむを得ず削って治さなければいけませんが、決して歯を削りたい訳ではありません。歯を抜きたい訳ではありません。どうにか削ったり抜いたりしないですむ方法はないか、なるべく歯を削らずにすむ方法はないか、不幸にして抜歯に至ってしまった場合、それ以上歯を失わなくてすむ方法はないかをいつも考えているのです。
口の中の問題は口の中だけで終わるばかりではありません。近年、いろいろな方面の研究が進み、口の中の病気が原因で起こる全身の合併症がいくつもわかってきています。例えば、糖尿病の方は歯周病になりやすくなり、逆に、歯周病に罹患している方は糖尿病になりやすい、あるいは糖尿病が歯周病の治療なくしては治らない方が中にはおられます。妊婦さんでは、歯周病にかかっていると低体重児出産になる可能性が健康な方より高くなるとも言われています。他にも、脳や心臓の血管をつまらせてしまう血栓を調べてみると口腔常在菌が発見される事があるなど、口の中と全身は切っても切れない関係にあります。こういったことは歯医者から患者様に情報を発信し、口の中の環境を改善することで体の異状を未然に防ぐことが可能なのです。 |